
『アドニスの声が聞こえる』
フィル・アール
杉田七重・訳
小学館24.4 1800円+
舞台は第二次世界大戦下のロンドン。ドイツの空襲が襲う。街は瓦礫に変わっていく。
ジョーゼフ・パーマーは父が戦場に行って、ロンドンの知り合いの元に引き取られてきた。体中が怒りに満ちて、誰をも受け入れられない。ミセスFは私設動物園を受け継いでいるが、戦争下では非常な困難であり、生き残っている動物もわずかだ。ラクダのふんの始末や動物たちの絵さの確保がジョーゼフの仕事になっていく。ゴリラのアドニスの世話もその一つだが、なかなかなじんでくれない。学校へ行くことになるが、ほとんどは疎開し、残っている生徒はわずかだ。校長はスパルタ主義。すぐに鞭を持ち出す。担任の女性教師は一人一人に寄り添った指導をする。同じクラスである女の子シドがミセスFと共に動物園の世話をしている。学校でも何かとジョーゼフを援助するが、ジョーゼフはなかなか心を開かない。ジョーゼフには識字障害がある。算数などは抜群のできだが。
戦火はせまり、動物たちは殺害を迫られる。アドニスとは心を許し合う関係になってい
ったが、最後はジョーゼフがライフルで撃つ。ゆっくりは読めなかったが、少年とゴリラとの友情が育っていく経過と、戦争というものがすべてを奪っていく経過とが描かれて、惹きつける。(岩辺)
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