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例会報告「ブックトーク・川崎洋さんの詩で遊ぼう」

新年度が始まった桜満開の中4月例会を開きました。今回は廣畑環さんによるブックトークと岩辺泰吏さんによるアニマシオンでした。

■「継ぐ」「繋ぐ」を考える本たち

廣畑さんが今回のブックトークのテーマを「繋ぐ」「継ぐ」にしたのは、読書会で扱った『百年の子』(古内一絵/著 小学館)がとても良い内容でそこから考えたということです。

このテーマに沿って5冊の本の紹介がありました。『藍を継ぐ海』(伊予原新/著 新潮社)『お探し物は図書室まで』(青山美智子/著 ポプラ社) 『しろがねの葉』(千早茜/著 

新潮社) 『俺たちの箱根駅伝上下』(池井戸潤/著 文藝春秋) 『この夏の星を見る』(辻村深月/著 KADOKAWA )の5冊です。それぞれの本の内容やエピソードが紹介されるとともに「継ぐ」「繋げる」とどう関係しているかの説明がありました。あるものとあるものを「繋ぐ」と前にあるものを引き「継ぐ」ことの違いの説明もありました。『百年の子』から始まった「繋ぐ」「継ぐ」がこんなにも多くの本に結びついている。それを繋いだ廣畑さんの本への強い思い、本への愛情を感じた30分でした。紹介されたどの本も読みたくなりました。

■川崎洋さんの詩で遊ぼう

詩をこよなく愛する岩辺さん、小学校教員時代から子どもたちと詩を楽しんできました。それは著書『子どもたちに詩をいっぱい』(ROJUN)や『まどさんの詩で時間割』(かもがわ出版)の中で詳しく記されています。今回は川崎洋さんの詩でアニマシオンです。

まず、詩人川崎洋さんの説明がありました。1930年生まれで疎開や勤労動員を経験します。戦後すぐに父親が急死。トラック運転士や米軍基地のガードマンなどをして生活をつなぎます。その中で茨木のり子さんと出会い、同人誌『櫂』を創刊し詩を書き続けます。苦しい生活の中でも詩を描き続けた川崎洋さんの人生がわかりました。

■「たんぽぽ」でアニマシオン

 今回やったアニマシオンはふたつです。一つ目のアニマシオンは後藤竜二さんの『12歳

たちの伝説』(新日本出版社)から入りました。この物語の中に川崎洋さんの「たんぽぽ」が登場します。岩辺さんからこの物語の説明がありました。5年生では担任をやめさせてしまった荒れたクラスです。6年生に進級した教室に新しく担任になった若い女性の森先生が来ます。その森先生が荒れた子どもたちを引き付ける詩の授業をするのです。感動的な話です。そしてこれが最初のアニマシオンです。

「たんぽぽ  川崎洋

 たんぽぽが たくさん 飛んでいく

 ひとつひとつ みんな(   )があるんだ」

この(   )に入る言葉は?

参加者がそれぞれ配られた短冊に言葉を書いていきました。それが黒板に貼られます。

(未来)(夢)(タネ)(個性)(かお)(プロペラ)(いのち)(はね)(希望)等など。

川崎さんの詩は(名前)ですが、それぞれの言葉の良さがわかります。

そして、後半の詩に入ります。

「みんな名前があるんだ おーい たぽんぽ おーい ぽぽんた 

おーい ぽたたぽ おーい ぽたぽん 川に落ちるな」

岩辺さんから「まだ名前があるよね。それを考えよう」とた ん ぽ ぽ の4枚のカー

ドを使ってこの詩にない名前を作っていきました。12通りできます。この作業をすると

川崎洋さんの詩を楽しめます。子どもとやったら楽しいだろうなと思います。

■子どもの詩に寸評

ふたつ目のアニマシオンは子どもの詩に寸評を書くというものです。これは川崎洋さんが読売新聞〈こどもの詩〉欄で子どもの詩選と寸評をしたことを参考にしたものです。川崎洋さんは子どもたちの詩に寸評を書く中で、「彼らの詩はしばしばわたしの感性の錆をねこそぎ落としてくれます。彼らは大人が失ってしまった能力や感性を心と身体の中に持っていて、時に神秘的でさえあります」と語っています。

子どもたちが描いた4つの詩が配られ、参加者が寸評を書いていきました。例えばこのような子どもの詩です。

 

「ぼく 浜屋茜(神奈川・小4)

 ぼくは今二年生です あまりべんきょうができません 

 でも ぼくはぼくなりに 生きています

 あたまわるいけど 学校がすきです」

この詩に対して参加者が寸評を書いていきました。そして発表。

「先生も頭が悪いけど学校が好きです」「学校も君が好きだと思うよ」「学校が好きでい

てくれてありがとう」等の寸評がありました。これをやると子どもの詩の良さがわかるし、寸評の大切さもわかります。岩辺さんから、子どもは教師の赤ペンをとても大切にしているとの教師による赤ペンを入れることの重要性が語られました。さらに、岩辺さんから川崎洋さんを例に出して、詩を扱う時に注意してほしいという話がありました。それはその詩がおもしろい、楽しいだけを子どもたちに伝えるのではなく、その詩人の全体像、その詩人が持っている広い世界を伝えることが大事だということです。このアニマシオンの最初に川崎洋さんの人生が語られたのはそのためです。最後に岩辺さんがこれまで詩を使ってやってきたいくつかのアニマシオンの説明がありました。詩の面白さ、詩人の生き方を知ることの大切さ、詩の奥深さがとてもよくわかる感動的なアニマシオンでした。(記録:笠井英彦)