『「友だち」から自由になる』
石田光規著 光文社新書 2022年9月30日
今の中高大学生は友だちがいないといろいろな所で聞きます。私も昨年、中学3年生の授業でこんなことがありました。「先生、友だちの授業をやってもらえませんか?友だちの大切さはわかるんですが、どうやったらできるのかわかりません」とある生徒が発言、まわりの生徒も「先生、ぜひ」と言うのです。そこで、「友だちの授業」をするために資料探しを進め出会ったのがこの本でした。著者は社会学者で孤立・孤
独の研究者です。そのため「友だち」に関係する本を何冊も出しています。本書は、友だちをいろいろな面から論じています。古代哲学者プラトンやアリストテレスの友情論、友だちをめぐる歴史、メディアが友だちをどう扱ってきたか、今の若者の友だちの作り方など。著者は友だち関係が変わったのは日本社会が「集団的な日本社会」から「個人化した社会」になった1980年代から1990年代だといいます。それによって友だち関係が「結果としての友人」から「形から入る友人」になったのだと。この「形から入る友人」は、対立を回避し、場の空気を読むことで成り立つもので、ケンカはしない、本音を出さない関係だといいます。それにより衝撃的な統計も紹介されています。2013年以降、若者の悩みごと・心配ごとの相談相手が友人ではなく、母親になったのだと。今の若者の価値観であるコスパの問題やスマホ・SNSでの繋がりの問題も論じています。私たち中高年が考える「友だち」と若者の「友だち」には大きな違いがあるのです。本書は、教師など子どもに関わる仕事についている方、会社などで今の若者の対応に苦労している方に大いに役立つと思います。(笠井)
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