桑原亮子『トビウオが飛ぶとき』
KADOKAWA 2023.5
銀読書会では、はじめに参加者から一冊ずつ「おすすめの本」を紹介する。それはどれ
もすぐに読みたい本ばかり。左側に図書館に予約を入れる。これも、その一冊。
―トビウオが飛ぶとき他の魚は知る水の外にも世界があると 梅津貴司
―光る街めがけて降りてきただろう雪を吸い込む側溝の闇 北條龍之介
― すな山に トンネルをほる 向こうから ほる弟と あくしゅになった
長崎県・小学校二年・立花彩羽
NHK朝ドラ「舞いあがれ!」作者の一人である歌人桑原亮子さんが、登場人物の個性に
即して読み分けた短歌・詩である。子どもの作品もその一つ。すごいなあと思う。短歌という表現の豊かさ。歌人という人の豊かな力……。俵万智さんが「解説」で、「短歌の素晴らしさとは」として、「人の心に寄り添い、折に触れお守りのように励ましてくれるのだ」と書いている。作者・桑原亮子さんは、自分の作った作中人物であるけれど、その中心人物である貴司が子どもたちにこう語る。
― 短歌を作るっちゅうことはな、「誰とも違う自分が、ここにおるで!」って胸張ることやねん。
この本で、生きることをはげまされ、書くことで生き直していく若者もいるのではないだろうか。バッグに入れて持ち歩き、読み返していく楽しみが増えた。(岩辺)
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