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今こそ読もう、この一冊!!123

『魔法の夜』  アルブレヒト・リスラー=絵

ドミニク・マルシャン=原作 木本 栄=訳

講談社 2001年

 シャンソンから生まれた絵本。フランスの歌手であったドミニク・マルシャンが発表した歌がもとになつて書かれました。1972年にこの物語を歌にしたとき、ドミニクは20歳で、彼は37歳という若さで亡くなりました。後にこの物語を再び世に出したいという要望が高まったことで絵本が生まれたそうです。歌は、彼のところに身を寄せたことのあるリトンという男性の実際のエピソードにまつわるストーリー。

 冷たい風の吹くクリスマスの夜。家々には明るい灯りがともされています。その中をあてもなく歩く一人の老人。いつのまにかついてきた白いちいさな犬。もみの木の下で老人は犬とパンを分け合います。物語を聞かせ、歌も歌ってやります。あまりの寒さに古い小屋にかけ込んだ二人。しんしんと更けていく夜。不意に子犬は自分は魔法使いであると告げ、願いをかなえてくれると言います。老人は考える間もなく答えます。魔法使いは、長いこと考えて結論を出しました。はたして、老人の願いとは?魔法使いの答えとは?驚きと、深く心にしみるラストシーン。

 

アルブレヒト・リスラー(1944年生まれ。グラフィックアート作家)の色鉛筆画は淡い色合いですが、引き込まれて、まるで自分がその場にいるように感じます。話を読んだ後に絵だけを見ていくだけでも伝わってくるものがあり、幾度も見なおしてしまいました。1度は手に取っていただきたい本です。(大谷)