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今こそ読もう、この一冊!!116

『野生のロボット』

ピーター・ブラウン作・絵 前沢明枝訳

 福音館書店 2018年11月

嵐で貨物船が沈み、積み荷だったロボット、ロズが無人島に流れ着く。自然の中であまりにも不自然なロズは、生きていくために野生動物たちの行動を学んでいった。あるとき、一羽のガンを卵から育てることになる。始めはロズを警戒し、恐れていた動物たちも、徐々に心を開いていく。しかし、平穏な日々は永遠に続かなかった・・・。 個性あふれる野生動物たちとの交流は、読んでいて心温まる。「野生」「ロボット」、どう考えても相容れない二つの言葉。この二者が、物語を通してどのように溶け合っていくのか。一冊の本の中に、自然との共存、生と死、親子の絆、そして生命そのもの、いくつかのテーマが見て取れる。ロズと野生動物との関わりの中からどんなイメージを受け取るかは、読者に委ねられているのだろう。

 続編を期待させる結末に、読後は『帰れ 野生のロボット』(2021年)を手に取らずにはいられない。(名鏡琢人)