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今こそ読もう、この一冊!!115

『Mガールズ』

濱野京子著 静山社 2021年2月

 COVID-19のパンデミックが収束してしばらく後の世界。再び新型のウイルスによる

感染症が流行し、人々は振り回されていた。感染のリスクレベルが定められ、レベル3では外出が10日に一回の指定された日、限られた時間帯のみ。登校も始業式の一日のみで、あとはずっとオンライン授業だった。

 主人公、美梨(ミリ)の住むF市はA・B・Cのエリアに分かれ。エリアAにはお金持ちが多く住み、エリアCはダウンタウンとなっていた。ミリと、愛依(メイ)は共にB地区の三小に通う小学6年生。二人ともヒップホップが好きなことから始業式で意気投合し、画面越しに同じ曲を踊っては動画を撮っていた。しかし二人だけでは寂しいため、動画をアップして仲間を募集することに。F市内、小学6年生限定で募集して集まったのは、エリアCのモネ、エリアBのムギホ、エリアAのマドカの三人だった。全員のイニシャルがMであることから、ユニット名は「Mガールズ」となった。

ひたすら画面越しに動きを合わせていく5人。いつか画面の外で、真っ青な空の下で、一緒に踊れることを夢見て。 執筆は2020年(出版は2021年)だが、物語中の終わりの見えない感染症の状況は、現在の現実社会ともリンクして見える。希望とは何なのだろうか。現実世界では「不要不急」に対して自粛要請が繰り返し出され、文化芸術イベントは軒並み中止に追い込まれた。だが、閉塞感に満ちたこの世界で、ミリのような、「人々を楽しませたい」という思いこそが、私たちには必要不可欠なのではないだろうか。この状況に、終わりが来ることを強く願って・・・・・。(名鏡琢人)