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12月例会報告「マンガは文学か」

123日、茗台アカデミーにて12月例会を開きました。今回はショートアニマシオンが廣畑環さんの「ブックトーク」、ワークショップが笹島朋美さんの「マンガは文学か」でした。

■ブックトーク「近未来」

 廣畑さんは今回のブックトークをするために30冊の本を読んだと言います。たいへんな準備です。そして選んだテーマは「近未来」。新型ウィルスが猛威をふるう中、ダンスに燃える主人公の物語や首都を襲った大地震の中で母を失い絶望の中から生きていく中学生の話、生まれつき色を識別できない主人公が伯父さんの作った色を識別するロボットとの出会う話など5冊の本の紹介がありました。どの本でも「近未来」は明るい世の中ではありません。その暗い世の中を果敢に生きていく主人公の姿が語られました。読んでみたくなる本ばかりでした。

 紹介された本は以下の通りです。

 

Mガールズ』(濱野京子著・静山社)、『アポリアあしたの風』(いとうみく作・童心社)、『ペイント』(イ・ヒヨン著・小山内園子訳・イーストプレス)、『パラゴンとレインボーマシン』(ジラ・べセル著・三辺律子訳・小学館)、『帰れ、野生のロボット』(ピーター・ブラウン著・前沢明枝訳・福音館書店)。

■マンガは文学か

 このワークショップのねらいは「日本のマンガの幅の広さや文学的価値に気づく」です。

 まずやったのが「日本のマンガクイズ」。

2021年出版売上でコミックの占める割合はどのくらいか?

・人口比で最も漫画家を出している県はどこか?

・マンガ雑誌の紙はなぜ色づいているか?

などを解いていきました。驚きの数字もあり、日本のマンガに引き込まれていきます。

 次に「文学を読むとどんな良いことがあるか?」をグループで考えました。

・違う世界に行ける ・物語の世界を楽しめる ・人と共感できる ・心が豊かになる ・想像力が高まる ・友だちと楽しさを共有できる など多くの意見が発表されました。

 そして、アニメーターがつくった明治大正時代から2010年代までの日本のマンガの歴史を観ていきました。「のらくろ」や「巨人の星」「鉄腕アトム」「ちびまる子ちゃん」「スラムダンク」など懐かしいマンガがたくさん出てきました。私たちがいかにマンガと暮らしてきたかが確認できました。

 このワークショップのメインとも言えるのが次の取り組みです。アニメーターが用意したマンガをグループごとに読み合い、そのマンガの中の名言・名場面を探すというものです。グループで探し、それを発表していきました。これが読んでいくとなかなかいい言葉があるのです。例えば『リエゾン』では「子ども時代の幸福な記憶は一生の宝になる」。『山と食欲と私』では「いやいや『ひま』でいいんです。『ひま』っていうのは最高の贅沢なんです」など。ここで、この名言が前にやった文学の良さと結びつくことがわかります。そう、マンガは文学と言えると体験的にわかるのです。このアニマシオンの流れの匠さにあっぱれの一瞬でした。

 討論ではマンガを格下に見るべきではない、マンガと小説の読み方の違い、マンガへの冷静な批判力を持つことも大事なのではないか等の意見が出されました。

 

 マンガを愛し、マンガの素晴らしさをわかっているアニメーターだからこそできたワークショップだったと思います。(笠井英彦)