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今こそ読もう、この一冊!!106

『誰も書かなかった玉城デニーの青春』

藤井誠二

光文社 2,022年8月1600円+

 オール沖縄の応援のもと、翁長雄志知事の遺志を受け継いで立候補、知事となった玉城

デニー氏については、あまり詳しいことは知らなかった。これは、ノンフィクションライ

ター藤井誠二氏が玉城氏をはじめ、音楽活動の友人たちや、幼いころからの親戚など多数

の人びとにインタビューを重ねて、一本の木から彫像を掘りだすようにして明らかにした

「玉城デニーの青春」である。

 前半は音楽活動を中心とする活動仲間たちからの聞き書きが中心になっていて、彼の人

格がどのように形成されていったかが描き出されている。後半、母の故郷である伊江島の従弟たちと兄弟のように伸び伸びと育っていく様子と共

に、戦後の沖縄の厳しい歴史とその中での暮らしが語られ、胸を突く。玉城氏は1,959年の生まれだ。日本中が貧しかった。とりわけ徹底した沖縄戦による被害、その後の米軍による土地収奪と基地支配。その下での貧困と差別。ハーフであることに対する侮蔑、差別。

 育ての親である知花カツさんはいじめられて帰ってくるデニー少年をこう励ましたと言う。

「トゥーヌイービヤ、ユヌタキヤネーランドー (10本の指は全部形も長さも違うけどどの指も大切だ。違うからいいんだ。) カーギャ、カードゥ、ヤル (人間は個性があるのがあたりまえ 見てくれは皮一枚だ)」

この言葉は知事選の中で大きな感動を呼んだ。政治家を目指していく過程での、妻千恵子さんの支えも大きい。「オール沖縄」の難しさも書かれている。ぜひ手に取っていただきたい。(岩辺泰吏)