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今こそ読もう、この一冊!!98

事務局学習会で読んだ1冊

『ピアノ調律師』

M・B・ゴフスタイン 作

 

 ルーベン・ワインストックは、世界一のピアノ調律師。息子夫婦が2年前に亡くなり、突然、孫娘デビー(デボラ)を引き取った。妻に先立たれ男ひとりで暮らしているルーベンに町の奥さん方は、デビーに何がしてやれるのと心配し食器など世話してくれた。ルーベンは、デビーに音楽は教えられる、将来本物の演奏家になれるかもしれないと考え、期待している。しかし、デビーはおじいちゃんと同じピアノ調律師になりたいと思っている。さて、その日ルーベンは、コンサートのピアノを調律することになっていた。予定のピアニスト、ワイターの代わりに来ていたのは、偉大なピアニストであるアイザック・リッ

プマンだった。お互いにリスペクトしているリップマンとルーベンは、再会を喜び合う。デビーも紹介され挨拶し、コンサート後の食事の約束をする。リップマンが楽屋で休んでいる間、ルーベンはピアノの調律をしていた。調律の手伝いが大好きなデビーは、傍らでピアノの音に合わせ歌う。ルーベンは、ふと、パールマン夫人の家の調律の仕事を思い出しデビーに、パールマン夫人へ「調律を明日に延ばしてほしいこと、今夜はアイザック・リップマンのコンサートだから必ずホールに来るように」と

の伝言をたのむ。デビーは、パールマンさんの家に行く前に、一度我が家に戻り、調律に必要な音叉やチューニングハンマーなどの道具を準備する。しかし、道具はどれも錆びていたり、問題があるのばかり。パールマン夫人に、アイザック・リップマンのコンサートのことは伝えたビリーだが、ピアノの調律を任されたとうそを言い、調律をはじめだす。ホールではルーベンが、一向に帰ってこないデビーを心配していた。楽屋から戻ったリップマンと一緒にパールマンさんの家に行くと、リップマンの予想どおり、ピアノの1オクターブだけ調律をすませたデビーがいた。デビーにピアノを弾くようにとリップマンに促され、メンデルスゾーンの『夢』を弾く。

  コンサートでの素晴らしい演奏に聴衆は大満足し、繰り返しアンコールする。リップマンは、最後にメンデルスゾーンの『夢』を演奏する。コンサートの後、感想を聞くアイザックに、デビーは「リップマンさんがどんなに激しく弾いてもピアノはビクともしなかった」とおじいちゃんの調律のことを夢中に話す。デビーにリップマンは、「将来私のピアノの調律をしてくれるかい?調律の道具は全部プレゼントするよ」と約束する。ルーベンは、デビーを世界一の調律師に育てようと決心し、デビーはルーベンの手をとり、「おじいちゃんのような調律師になる」と誓った。(記録:石井)