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今こそ読もう、この1冊!!80

『ヴォドニークの水の館』 まきあつこ 文

 降矢なな 絵

2021年4月1日 第1刷発行  BL出版

ヴォドニークはチェコの国周辺の地域で伝えられる、川に住んでいる不気味な水辺の主です。たいてい緑色の体で、立派な燕尾服を着ていて、それが濡れている間は地上でも元

気でいられると伝わっているそうです。

 この話はチェコのむかしばなしです。とても貧しい家のむすめが、あまりのひもじさに家を飛び出して泣きながら岸辺を歩いていると、ヴォドニークが出てきてむすめをつかまえ水の館へ連れて行きました。めんどうをみてやるから自分に仕えろとヴォドニークに言われ、むすめはいいつけをよく守り、毎日毎日はき掃除に励むのですが、掃き集めたゴミはなぜか金のつぶにかわり、こづかいとして与えられました。ところがある日、ふとしたことからむすめはいいつけを破ってしまいます。一度は許されきちんと仕えるようになった娘ですが、こんどは自らの意志で再びいいつけを破ることになります。守れと言われた

いいつけとは?いいつけを守っていた娘が守ることをやめたのはなぜか、そしてそれがどういうことを意味しているのか。そんなことを問いかけてくるお話です。全体的には淡い色調ですが、くっきりとつたわってくるもののある美しい絵本でした。(おおたに)