· 

今こそ読もう、この1冊!!69

すべての動物には家と呼べる場所が必要だ。

『わたしが鳥になる日』

 わたしはデセンバ―・リー。モーガン。母は幼い私を棄てて出ていった。母が出るときに傷つけられた背中には大きな傷跡が残っている。それは鳥の羽になるのだ、私は鳥になるのだと自分に言い聞かせてきた。施設から里親の家に送られるたびに、高い木の上から飛び降りて大きなけがをし、大騒ぎを起こしては施設にもどされた。人と信じあう関係を結べば心が重くなる。おいしい食べ物を覚えれば鳥としての生活が維持できなくなる…。だから、深い関係はつくらない。鳥が食べるひまわりの種などだけを食べてきた学校も同じだ。心を閉ざして生活してきた。デセンバーは12月生まれだから(安易な名づけだ)。

 そして、一人暮らしで畑を耕し、野生動物の保護センターのボランティアをしているエ

リナーに預けられる。エリナーは傷ついた野鳥をたくさん見てきている。その自然への復

帰活動もしてきた経験から、「鳥であろうとする」デセンバーを受け入れていく。 その経過が、デセンバーの語りを通してとても細やかに綴られていく。読んでいくのが苦しいほどに。11歳から12歳というもっとも難しい時。学校での女子いじめグループとの関わりも(日本でもよくあるケースだ)大事に描かれている。ビートルズの「エリナー・リグビー」の歌が流れていく。好きな人にはたまらないだろう。「すべての動物には家と呼べる場所が必要だ」という言葉がテーマだと思うが、結びにその「家」を見つけたデセンバーの結びの言葉がいい。

「地球上でいちばんすばらしい生き物は鳥だと思っている。鳥たちをきわだたせているのは、自力で飛ぶ能力だ。」

 作者にはこれが第1作だという。小学校の教師をしながら小説に取り組んでいる。 サンディ・スターク・マギニス作、千葉茂樹訳(小学館2021.3)(岩辺泰吏)