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今こそ読もう、この1冊!!47

『ゴリランとわたし』フリーダ・ニルソン作 よこのなな訳 ながしまひろみ絵

岩波書店 2021年4月 小学2、3年向向き

施設で暮らすヨンナは、いつも園長に叱られては惨めな思いをしている。ある日、ゴリ

ラのゴリランが、施設に、養子として引き取る子どもをさがしに来る。ヨンナはゴリラン

に選らばれ、園の事情からゴリランにあっさり引き取られる。だが、ゴリランの服装、言

葉遣い、ボロボロの自動車などから喜ぶことができない。いや、なぜゴリラの養子になる

のだ?とますます惨めな思いに陥るヨンナだった。だが、ゴリランと暮らすうち、ゴリラ

ンの思いがけない優しさや心遣いに触れ、ヨンナは心を開いていく。インチキ商売に励む

ゴリランの手助けを楽しむヨンナ!しかし、ゴリラと人間の養子縁組を快く思わない人々

や、ゴリランの土地を狙う悪人(この悪人が、世間の常識の皮をかぶってゴリランを非難するのだ!)などが、二人を引き離す。施設に戻されたヨンナだったが、やがて、自分の気持ちをまっすぐに見つめ、ゴリランと共に暮らすことこそが自分の幸せだと気づくのだった。

ゴリランの商売は、古物商で、安い値札をつけた商品を、口先一つで、値札よりずっと高く客に売りつけること。さらに、ヨンナが来てからは、間違った値札をつけたと客の前でヨンナを叱り、怒鳴り、見かねた客が高価格で品物を購入するよう仕向けることである。まあ、とんでもない商売である。それに・・・ゴリランの欠点を上げれば、きりがないだろう。それでも、ゴリラだというだけで、じろじろ見られ嫌われるゴリランに胸が痛み、不器用で孤独で、ゴリランの優しさに魅かれていくヨンナの幸せを祈ってしまう。ゴリランと、その最高の相棒ヨンナは、無性に愛しい。人間として(?)深く信頼し合う二人(?)は、世間の常識など通用しないのだ。この本は、小学2~3年向きとのことだが、その年頃の子どもたちが、この破天荒な物語と主人公たちを受け入れ、愛してくれることを願っている。(千田てるみ)

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コメント: 1
  • #1

    ゆうた君 (日曜日, 20 6月 2021 12:56)

    読みました。奇想天外というか、いやいや、とても現実的というか……。ゴリランとヨンナ二人の交流、愛情に感動。これは2,3年生向きですかねえ。人権問題の啓発ともいえる。あたえるより、まずわたしが読もう。