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今こそ読もう、この1冊!!43

『「顔」の進化』馬場悠男著

 講談社ブルーバックス 2021年1月

 書店で何か面白そうな本はないかと探していたら、何とも奇妙な表紙の本があった。それが本書だ。タイトルは『「顔」の進化』。確かにそれならこの表紙もわかる。手にとってパラパラと見るととにかく面白い。「顔とは何か」から始まり、「ヒトの顔は変な顔か」「ヒトの顔はなぜ違うか」、「ゾウの鼻はなぜ長くなったのか」というのもある。最後は「子どもたちの顔を鍛える」、これは教育や子育てに関わりがある。迷わずに買ってしまった。そして読んでみるといろいろなことを教えられた。著者は人類学者。見出しは面白いが、書いてあることは学問的、科学的で、頷くことばかり。例えば、霊長類の中で人間だけが皮膚に毛がない。これが人間を人間たらしめるものだと。そしてその毛がない皮膚の中でも顔の皮膚は一番薄い。それによって人間は微妙な表情を演出し社会的な関係ができるのだと。そうなんだ。顔の皮膚から人間の社会性

がわかるんだ。これは授業で使える。そして何よりも顔を通して人類の進化を知ると、人種によって人を差別することがいかに愚かで間違っているかがわかる。ひとつのテーマについての説明が端的にまとめられており、とてもわかりやすい。人類学の面白さもわかる。(笠井英彦)