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今こそ読もう、この1冊!!38

『たちどまって考える』

ヤマザキマリ著 中公新書クラレ

2020年9月 840円

 

 もともとヤマザキマリさんの漫画やエッセイが好きだったので、今回も手に取って読みました。新型コロナでどこかへ行くことが出来なくなってしまったヤマザキさんの考えた様々なことがつづられていますが、日本と海外の往来、海外の知人友人(身内も)も多いヤマザキさんが、14歳からひとりで海外へ行き得てきた「自分の頭で考える」力を、今回も堪能しました。もともと知識も語彙も非常に豊富な方ですので、文章が読みやすく興味深いこと(コロナ禍における海外から見た日本、海外事情、考え方など、海外に知人友人身内が身近にいるからこそわかること)も多く書かれ、ヤマザキさんがどのように感じ考えたのか、自分の狭い思考を押し広げてくれるように感じます。

 10代のころにした経験というものは非常に大きいということは、自分を振り返っても感じますが、実際に体験することが難しくても、美術書・文学・旅行記などなど本を通して疑似体験することもできます。コロナ禍で外出できず立ち止まらざるを得ない状況の中で、インプット不足を名作映画や文学に求めるなど共感できるところも多いです。

  さらに、「テクノロジーが進化しても人間は時間とともに賢くなる生きものではない」ことや、「自由が拘束される時こそ自らの想像力が大事なのだ」、ということも言っています。

「パンデミックは、そんな我々にいったん立ち止まって学習する機会を与えてくれたのだと、私は捉えています(おわりに、より引用)」これまで歴史上の事と思っていたのが、現実今自分のいる時代に起きていることなのだということを踏まえ、読者が「考える」きっかけになるのではないでしょうか。

(水流添 淳子)