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今こそ読もう、この1冊!!23

『貸出禁止の本をすくえ!』

アラン グラッツ作

ないとうふみこ訳

ほるぷ出版 2019年7月   1500円(本体)

 図書館に行った小学4年生のエイミー・アンは、自分が気に入っている『クローディアのひみつ』という本が本棚から外されていることに気づく。司書のジョーンズ先生に訪ねると、PTA会長が小学校の図書館にはふさわしくないとして異議申し立てをし、教育委員会もそれに同意したからだという。その理由は「子どもにうそつきや盗みや、大人への反抗を教えるから」という理由だという。司書のジョーンズさんのすすめで教育委員会の会議に出て、その本が大好きな理由を言って、その本を取り戻そうとするが、みんなの前で自分の意見が言えず、貸出禁止措置を解くことができなかった。そこで、ほかに11冊の本が貸出禁止になったことを知り、貸出禁止になった本を片っ端から読んでやろうと決意する。自分の小遣いで本を買ったり、友だちの持っている本を借りたりして、かたっぱしから本を読む。

 エイミー・アンは、学級の自分のロッカーにそれらの本を入れて、友だちに貸してあげる「ロッカー図書館」を始め、多くの子どもたちが利用するようになる。しかし、ロッカー図書館も先生たちに知られてしまい、エイミー・アンは、出席停止処分となる。弁護士のパパやママから「反対するにしても、正しいやり方とまちがったやり方があること」「ロッカー図書館はまちがったやり方だ」と言われる。

エイミー・アンが、出席停止が解けて学校に行くと、貸出禁止の申請をしたPTA会長の子のマービンは、すてきなことを思い立つ。すべての図書室の本に対して「異議申し立て申請書」を出すことである。それに賛同したエイミー・アンたちは、図書館の本すべてに貸出禁止の理由をつけて、貸出禁止の申請をすることにする。

 教育委員会の会議に出席したエイミー・アンたちは、自分の意見をはっきりと述べる。エイミーの意見は教育委員会の会議で認められて、外された本は元の書架に戻されることになる。

 このお話には、よく知られている多くの実在する本が登場する。本の最後に4ページにわたって74冊の本のリストが掲載されている。『ウォーリーをさがせ』や『大草原の小さな家』などよく知っている本も多い。「この物語の中で教育委員会が貸出禁止にするのは、過去30年間にアメリカの図書館で少

なくても一度は、じっさいに異議申し立てや貸出禁止措置を受けたことのある本です。」という作者の言葉で、お話は終わっている。

 子どもであっても、図書室の本について異議申し立てができ、それについて意見を述べることができるアメリカの学校図書館の仕組みや、鍵のかかる自分のロッカーがあるアメリカの小学生の生活がよく分かるお話である。(渡部康夫)

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コメント: 1
  • #1

    ゆうた君 (木曜日, 17 9月 2020 10:40)

    子どもの異議申し立て活動がおもしろいですよね。
    事実を踏まえて創作されたということもふまえ、
    子どもたちの生活をめぐっては、このようなことがいっぱいあるので、
    ぜひ中学生・高校生も含め、広めたいですね。