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9月例会「ブルーナ絵本でアニマシオン」

9月例会報告

 95日、日比谷図書文化館で9月例会を開きました。コロナ禍での開催のため、マスクをして椅子の間隔を開けての例会でしたが、集い語り合うことでいい学びになった3時間でした。今回は笠井英彦によるショートアニマシオン、笹島朋美によるワークショップでした。

■ショートアニマシオン

「オリンピック秘話でアニマシオン」アニメーター:笠井英彦

 このショートアニマシオンは、1964年の東京オリンピックを扱うため、中学生以上、どちらかと言えば中高年に適したアニマシオンでした。

 まず、東京オリンピックのクイズから。

1964年の東京オリンピックで印象に残っている競技は?」

答えは1位女子バレーボール、2位男子体操、3位マラソン、4位重量挙げ、5位水泳、6位柔道でした。これを当時の国民はテレビで見ましたが、その時女子バレーボール決勝の視聴率はなんと85%。テレビが普及したことと東京オリンピックは結びついていました。

 そこで1位の東洋の魔女を見ていきました。

「3枚の写真を見て考えましょう」ということで、「あゝ野麦峠」と「東洋の魔女」、「奥様は魔女」の3枚の写真の関係を考えました。若い方は知らないため、ここで映画「あゝ野麦峠」の予告編と「東洋の魔女」の大松監督の映画の一部が流されました。

「東洋の魔女」と「奥様は魔女」の共通点は「魔女」と「奥様」(バレーボールの金メダリストはその後、奥様になり、その頃「奥様は魔女」のドラマが始まる)。

「あゝ野麦峠」と「東洋の魔女」の共通点は、「繊維産業」、「共同生活」「チームワーク」などの意見ができました。

 次に『あゝ野麦峠』と大松監督が書いた『なせば成る!』『東洋の魔女』からの抜粋が配られ、どちらの本のものか考えました。ほとんど参加者が当たっていましたが、当たらない人もいました。これは『あゝ野麦峠』での女工の生活と「東洋の魔女」の生活がとても似ていたということです。

 

 最後に、東洋の魔女が誕生した背景には当時日本の主産業である繊維工業での女性労働者への労務管理の一部としてバレーボールが取り入れられたという話がありました。

■ワークショップ

「ブルーナ絵本でアニマシオン〜ようこそ!うさこちゃんの世界へ〜」

アニメーター:笹島朋美

 このアニマシオンはアニメーターが小学校1年生と取り組んだものです。参加者は1年生になったつもりで参加しました。

 アニメーターがうさこちゃんTシャツを着て登場。うさこちゃんのぬいぐるみを見せ、「この子の名前を知っていますか?」で始まりました。

 まず、うさこちゃんを知ってもらうため、『ちいさなうさっこちゃん』の読み聞かせがありました。

 うさこちゃんのイメージをもった上で、6冊の絵本の表紙(厚紙に印刷)と絵本の挿絵を印刷したもの6枚をグループに配り、「とび出した絵を絵本に返してあげましょう」と指示。グループで6枚の挿絵がどの絵本のものか組み合わせました。そして発表。

※6冊は『うさこちゃんとうみ』『うさこちゃんのてんと』『うさこちゃんおばけになる』『うさこちゃんがっこうへいく』『うさこちゃんはじょうおうさま』『うさこちゃんのにゅういん』

この6冊の中でどの絵本を読んでみたいかをグループで話し合い発表しました。

 次は「どんなお話か説明しよう」という取り組み。

『うさこちゃんとどうぶつえん』『うさこちゃんひこうきにのる』『うさこちゃんどじてんしゃ』の中から1冊を選び、絵を見てそのお話を考えるというものでした。それぞれの本について6枚のカードが用意され、カードの上段には絵が、下段には説明を書く欄があるカードです。グループで、6枚のカードを順番に並べ、絵に沿った内容を考えていきました。

そして発表。その後、実際に絵本を手に取り内容を確認しました。これは絵から文章を考える作業で面白く取り組めました。

 最後に発展編として「ブルーナカラー」について考えました。

ブルーナのうさこちゃんシリーズで多く使われている色は「ブルーナカラー」と呼ばれている赤、黄色、青、緑、茶色、グレーの6色です。

 

ブルーナの絵本や絵を見ながら、それぞれの色がどんな場面で、どんな意味で使われているか考えました。例えば、黄色は温かい気持ちの色、緑は植物、自然、青はよそよそしい去っていく色等。絵本の色について深く考えました。

討論では、

・色についての取り組みが面白かった。色の意味や場面を考えることができた。

・絵を見て物語を考えるところがとても面白く、また実際の本ではどうなっているかと比べることができて良かった。

・今までうさこちゃん(ミッフィー)というとキャラクターしか知らなかったが、絵本を知り、深く考えることができた。

などの意見ができました。

■参加者の感想

○「ああ野麦峠」「東洋の魔女」の共通項を見ていると、現代の部活指導に通ずるところがあると感じました。体罰など、減ってきているとはいえ、強豪校では未だグレーゾーンの指導が行われている中で、未来を担う世代がどうしていったらよいか考える機会になるのではないかと考えました。(M

○「ミッフィー」の絵本はこんなにも有名なのに、実はあまりじっくりと読んだことがなかったことに気づきました。1年生の担任をしているので、ぜひ追試させてもらいたいと思いました。(H

○シンプルな中に様々な思いが込められていることに気づくことができました。色で表現したり、向きで場面を分けてみたり、絵の順番を考える活動を通して自分で気づける喜びがありました。(F

○小学生にもわかるシンプルな活動でありながら、もっと読みたいと思わせる仕掛けや作者やシリーズの魅力が感じられるワークショップだったと思います。授業の参考にさせていただきます。(Y

 

(記録:笠井英彦)

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コメント: 1
  • #1

    (月曜日, 07 9月 2020 10:02)

    「東洋の魔女」など、懐かしい言葉。それが”スポ根”鍛えよ、耐えよという部活や勉強を導きました。その背景に「汗を流させれば、余計なことを考えない」という管理があることを知りました。
     「うさこちゃん」、新しい発見がいっぱいでした。5枚のカードからストーリーを考えた後で、絵本を読むとブルーナの特徴やメッセージ、訳者の石井桃子さんの滑らかな文がよくわかりました。丁寧な準備、ご苦労様でした。