今こそ読もう、この１冊！！２１

『夜間中学へようこそ』原作山本悦子　漫画沢音千尋　双葉社　2020年3月

　この本は2016年に発行された山本悦子著『夜間中学へようこそ』のコミック版です。

漫画になることで読みやすく、イメージがしやすくなっています。原作山本悦子さんが東京葛飾の夜間中学校を見学、取材し生まれたものです。そのため漫画に出てくる話にリアリティーがあります。

　この漫画の主人公は中学1年生の優奈とその祖母です。祖母は父が戦死し貧しく、家事を手伝わなくてはならなかったため小学校にほとんど行けませんでした。そのため平仮名しか書けずその後の人生は苦労の連続でした。そんな祖母がもう一度学びたい一心から夜間中学への入学を決めてきたのです。家族は反対しますが、祖母の決意は固く、入学することになります。しかし、その祖母がちょっとした不注意から捻挫してしまい、優奈が送り迎えすることに。その祖母が通う夜間中学は優奈にとって知ら

ないことばかり。外国人や年配の老人、小学校でいじめられた子等々がクラスメートです。80歳近くになる祖母は「あたしは日本一幸せな中学生」と言って意欲的に学びます。その姿を見た優奈は学校で学ぶとはどういうことかを考えていきます。学ぶことと生きることが結びついていきます。子どもの時、母親から優しい言葉などかけてもらえなかった祖母ですが、国語の授業の中で自分の漢字の意味を知り、自分がいかに母親に愛されていたかを知り涙を流します。孫の名前を漢字で書きたいと祖母が繰り返し優奈の字を書く場面は感動的です。学びとは何か、学校とは何か、友達とは何かについて、深く考えさせられる漫画です。教育に携わる方にはぜひ読んで欲しい一冊です。（笠井英彦）