『しまふくろうの森』
前川貴行 写真・文
あかね書房 本体1500円
天然記念物「しまふくろう」については、「世界一大きなふくろう」とか、「神としてあがめられていた」とか、「絶滅危惧種に指定されたはず・・・」など、断片的な知識はお持ちでしょう。北海道の夜の森で遭遇したい、と憧れる人もいると思います。そのしまふくろうの、「今」を21枚の写真と共に伝える本です。
まず感心したのは、飛んでいるこの鳥を真正面から撮った写真が5枚もあるということです。のんびり森にいるだけで撮れる写真とは思いません。体力も感性もさらに長い期間を費やして、はじめて撮れるだろうと思いました。野生の荘厳さとこの鳥の美しさに心打たれます。また、ヒナの写真やつがいが寄り添う写真も多く、この鳥の愛情深さが伝わります。
この鳥については、大きな木が切り倒され、巣穴にするための樹洞が減って、絶滅の危機に瀕していると伝えられたことがありました。現在は、保護活動の甲斐があり、生息数は一時期より増えたそうです。しかし、森の伐採は進み、獲物を獲る河川は減り、絶滅の危機が去ったわけではないそうです。そして、人間に巣箱を提供されて生き延びる姿は、森の王者に相応しいのだろうか?前川さんは読者に問いかけます。
回答を出すのは、次代を担う子どもたちでしょう。見事な写真と真摯な問いを提起するこの本をもとに、子どもたちに環境問題を考えてほしいと思います。
(千田てるみ)
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てるちゃん (土曜日, 23 5月 2020 21:33)
ふくろうは、実にかっこいい動物です。おまけに可愛い。
ふくろうカフェがあるくらいですものね。
しまふくろうは無理でも、一度自然の中のフクロウを見てみたいなぁ。