1月 銀読書会『六月の雪』(乃南アサ著 文藝春秋 2018年5月)1月30日(木)

 千代田区立図書館 参加者10名

  契約社員を退職し、新たな生き方を求めていた杉山未来(32歳)の言葉として物語が語られる。家族が福岡の引っ越したため、東京に残った未来と一緒に住んでいる祖母が階段を踏み外して入院する。祖母が生まれ育った台湾に帰りたいというので、未来は、祖母を元気づけるために、台湾の祖母が生まれた家の探しにいくことにする。台湾に行き、父の教え子の李恰華(39歳)、その友だちの洪春霞(30歳)、大学院の学生の楊建智、楊建智の高校の先生の林賢成、に案内をしてもらい、未来は、祖母が住んでいたと思われる家を探し当てる。昔の面影のある家に現在、住んでいる劉呉秀麗、劉慧雯、から台湾の歴史の中で必死に生きてきた女性たちの生き方を知る。

 テーマとして考えられることは、杉山未来自身のこれからの生き方への模索であり、日本や台湾の近現代の歴史の中での庶民の葛藤・苦闘・生き方を語りながら、閉塞感が充満し、生きる意欲を喪失している、未来をはじめとする現代の若者たち、とりわけ女性たちの再生への希望を描いたのではないかという意見が出された。

 物語の舞台は、台湾である。作者乃南アサは、東日本大震災に際して、200億円の義援金を出した台湾に驚き、40数回にわたって、台湾を訪れたそうだ。台湾には、日本の建物が今でも残っていて、日本文化に親しみを持つ人が多い。作者の綿密な取材に基づいてこの小説が書かれている。日清戦争の後、1895年(明治28年)4月17日、下関で締結された日清講和条約で台湾が日本に割譲され、日本の植民地支配がはじまる。