2月 銀読書会『名探偵カッレ城跡の謎』リンドグレーン作 菱木晃子 訳 平澤朋子 絵

(リンドグレーン・コレクション・岩波書店・2019925220日 千代田区立図書館 参加者11

 スウェーデンの夏休みの物語。主人公のカッレは食料雑貨屋の息子で13才。自称「私立探偵」で名探偵に憧れている。夏休みになり親友アンデッシュと隣のパン屋の娘エヴァロッタと共に探偵活動を始める。3人は冒険が大好きで「白バラ軍」を組み、事件を捜して歩くが平穏な町には事件の気配もない。ある日エヴァロッタの家に、母のいとこのエイナルおじさんが逗留する。彼から何かあやしげな匂いを嗅ぎ取ったカッレは、いつかおきる事件のために、男の行動を観察して記録をつけはじめる。そこに不審な2人組がその男を訪ねてきた。この3人は銀行家の家から宝石10万クローネ相当を盗むが、エイナルが持ち逃げし、2人が追ってきたのだ。白バラ3人組は宝石を捜し出すが、逆に捕らえられてしまう。警察が駆けつけ犯人逮捕、3人は救出された。その後も平和なのどかな町の自称「私立探偵」と白バラ軍の探偵活動は続くのだった。白夜の北欧の長い夏休みを朝から晩まで子どもたちが自由に遊び、そして難問題を解決していく様子は、「子どもの本の女王」と呼ばれる作者らしくみごとに描かれており作品世界に魅了される。加えて2019年の新版の発行の新訳者菱木さんのあとがき、平澤さんが挿絵を担当した理由も含め、目を通してほしい。

〈話し合い〉

・のびのびした子どもの姿のすばらしさや共感する仲間の姿が良い。

・作者の育ったスウエーデンの情景や自然の様子も伝わってくる。

・主人公は、洞察力、賢さを人から学んでいる。また正義感があり「ぼくの目標は世の中から悪をなくすこと。正直は一生もの」という言葉が印象深い。

・三人の子どもには夢がある。子どもたちがのびのびしているのは周りの大人が子どもを見守る寛容さがあり子どもを伸ばす大切な要因だが現在の日本は?子どもたちは?

・今どうして名作か?最近新訳や新装版の名作が出版され、読書会でもとりあげてきた。読むと子どもの頃のワクワク感が戻って、改めて名作を見直し、子どもたちに伝えたい。

・最近上映された「リンドグレーン」にも話題が及び作者の個性的な人物像や生き方と作品との関連まで話題がいき、自由で活発な意見が交わされ、和やかで楽しい読書会だった。

〈参考 アスレリッド・リンドグレーンを知るための本〉

『リンドグレーンと少女サラ』アストリッド・リンドグレーン著 サラ・シュワルト著

                    石井登志子 訳 岩波書店 2015・3

『暴力は絶対だめ!』 アストリッド・リンドグレーン著 石井登志子 訳 岩波書店20158

『リンドグレーンの戦争日記』 アストリッド・リンドグレーン著 

石井登志子 訳 岩波書店2017.11

『ピッピの生みの親アストレッド・リンドグレーン』   三瓶恵子著 岩波書店 199911

                                   (記録:増田栄子)

1月 銀読書会『六月の雪』(乃南アサ著 文藝春秋 2018年5月)1月30日(木)

 千代田区立図書館 参加者10名

  契約社員を退職し、新たな生き方を求めていた杉山未来(32歳)の言葉として物語が語られる。家族が福岡の引っ越したため、東京に残った未来と一緒に住んでいる祖母が階段を踏み外して入院する。祖母が生まれ育った台湾に帰りたいというので、未来は、祖母を元気づけるために、台湾の祖母が生まれた家の探しにいくことにする。台湾に行き、父の教え子の李恰華(39歳)、その友だちの洪春霞(30歳)、大学院の学生の楊建智、楊建智の高校の先生の林賢成、に案内をしてもらい、未来は、祖母が住んでいたと思われる家を探し当てる。昔の面影のある家に現在、住んでいる劉呉秀麗、劉慧雯、から台湾の歴史の中で必死に生きてきた女性たちの生き方を知る。

 テーマとして考えられることは、杉山未来自身のこれからの生き方への模索であり、日本や台湾の近現代の歴史の中での庶民の葛藤・苦闘・生き方を語りながら、閉塞感が充満し、生きる意欲を喪失している、未来をはじめとする現代の若者たち、とりわけ女性たちの再生への希望を描いたのではないかという意見が出された。

 物語の舞台は、台湾である。作者乃南アサは、東日本大震災に際して、200億円の義援金を出した台湾に驚き、40数回にわたって、台湾を訪れたそうだ。台湾には、日本の建物が今でも残っていて、日本文化に親しみを持つ人が多い。作者の綿密な取材に基づいてこの小説が書かれている。日清戦争の後、1895年(明治28年)4月17日、下関で締結された日清講和条約で台湾が日本に割譲され、日本の植民地支配がはじまる。