「フランスのアニマシオン」プレ学習会
フランスのアニマシオンは今:辻由美さん
先ごろフランスに行った時は、折しもフランス大統領選の最中。…一次選挙からどんな選挙行動をとるかが、大きな選択に。決選投票では、マクロンVSルペンは予断を許さない状況。図書館に行くと、“誰に投票したか”で話題沸騰だった。
(1)フランスのアニマシオン
有給休暇法(1936年)成立以来、民衆教育
運動としてアニマシオンは“互いに分かち合い、
読書と文化の世界への誘い”として広がりをみ
せる。そして戦後、自治体支援のもと公共図書館
でのアニマシオンは、実に多彩な形態をとって
行われ、社会文化的な運動として大きく発展。
70~80年代には、アニマシオンは「生命と
動きをあたえ、活気づける」(魂をいきいきさ
せる)活動として、司書の企画・立案によっては
学童 保育、美術館、博物館、高齢者福祉施設などあらゆる階層を対象に、アニメーター国家家資
格) の仲介で盛んに活動が展開されていった。アニマシオンは図書館を中心に行われてきたが、
開 れたアニマシオン”として、とりわけ学校とパートナシップを組んで、“子どもの
ためのアニマシオン”が展開され始めたのが特徴。
(2)私とアニマシオン
語学学校に通い、“言語の面白さ”を知った。通訳の仕事を始めると“言語の教育”
に関心を抱き、教育現場を見学したり、読書クラブの議論に参加したり、図書館員や
アニメーター話し合う中で、「そこに発見したのは、言葉と言葉のぶつかり合い、融合
しあう濃密な空間だった。人と人との直接のコミュニケーションがほんとうに生きて
いる空間。探しているものにめぐり合えたような思いがした」(『読書教育』)
――これが私とアニマシオンとの出会い。
(3)アニマシオンの役割
① 文化的役割…図書館の豊富な資料を発見させ、人や書物、音楽、映画などに対する興味
を触発し、互いに分かち合う(文化の民主主義化)。②社会的役割…世代をこえ、異な
った民族や社会層が混ざり合って、同じ文化的空間で社会的な絆を創りあげる。
③レ クリエーションとしての役割…無料で、申し込む必要がなく、好きなものを選択できる。
整備されたスペースで、安全快適。居心地よく”我が家”のような気分になれる場所。
ここでの子どもたちの出会いは、楽しみと交歓の時間となり、学校での体験や学習とは
別物である。今、とりわけ学校教育との連携によるアニマシオン――図書館(司書)が
年間プログラムを作成し、教育テーマにそって”より良く読み、よりよく考える”企画
が共同で進行――がますます重要に。
(4)ドミニクさんのアトリエ紹介
図書館で行うアトリエは多岐(ゲーム、科学、音楽、造形美術など)にわたる。
アトリエの利点は、参加者の能動性、遊び心、分かち合い、インタージェネレーション
(同伴の親も参加する)にある。読み聞かせとおはなし…あるオブジェから出発して、
それを導きの糸として、絵本2~3冊、指遊び、音楽、何かの音、そういったものを
結びつける。はじめ、展開、結末を持つ一貫性のあるパフォーマンスにする。
異なったものを結びつけ、一つのストーリーとしてまとめる。
――アニマシオンの始まりは、はっきりした形で示され、学期の使用、イントロ用の
決まり文句、照明の工夫もある。また、本の並べ方、置き方も芸術的に整頓される。
② 本の作成(よりより読み、よりよく見、よりよく選ぶために)…絵本を用いて、文学的
分析とグラフィズムの分析の手ほどきを行う。子どもたちに読書能力を培う。
絵本は短いので、本というものがどのように作られているかを、みんなで見て、みんなで
話し合う。つまり、協力しあう文学入門、画像や物語の分析。
――絵本から出発して、他のアニマシオン(哲学カフェ、造形美術、作家との出会い
など)につなげられる。
③ 造形美術…参加者による製作(栞、画面に絵)。マチスの切り紙の絵を参考にして、
作品をつくる。(3つのアトリエは、動画とともに紹介された)
【質問】…日本独特の読み聞かせや紙芝居は、アニマシオンでどう位置づくのでしょう?
◇読み聞かせや紙芝居を日本語(英語)でやっても、描かれた絵を通して子どもたちには
理解され、異文化交流になっていく。(記録:田所恭介)