とても私的な 『ぼくらの谷川俊太郎』通信

2 詩集に収録されていない詩

          =『校歌詞集』

アニマシオンクラブ:岩辺泰吏

 

2 校歌詞集

 これは、『まどさんの詩で時間割』(かもがわ出版2013.3)をつくるために、あらためて『まど・みちお全詩集』(理論社、正・続)などを調べていて気がついたことだけど、校歌をいくつも作詞しているのに、詩集には収録されていないんですね。それが、谷川さんの場合も同じです。「詩を書く」ということと、「校歌を作る」という仕事とは異なる営みなのでしょうか。(注:ネットにはあります)

 校歌というのは、頼まれてする仕事で、詩を書くというのはもっと自由な仕事だというのでしょうか。いや、そうだとどこかに書いているわけではないでしょうが。『13歳からのハローワーク』だったかの本では、「詩人」という職業はないけれど、「作詞家」というのはあるんですね。詩人では食べていけないということでしょうか。そういう理屈はここまでにして、谷川さんはたくさんの校歌を作っている。それを集めたのが、『ひとりひとり すっくと立って 谷川俊太郎校歌詞集』(澪標2008.12)です。 この本の「まえがき」で、谷川さんはこう書いている。

「私は校歌の作詞者・作曲家は基本的に無名であるべきだと考えています。本来は学校と

いう共同体内部から、自然発生的に産まれてくるのが望ましいのですが、実際にはなかな

かいい歌が出来ないので、私たちのようないわば職業的な創作者にお鉢が回ってくるので

しょう。作詞を担当する私は資料を読み、先生方や生徒たちが校歌に何を求めているのか

を取材した上で、その学校に対する自分の考え、イメージなどを言葉にしていくのですが

、そこにはおのずから自分の学校観、教育観も入ってきます。わたしはこれまでに百数十の校歌を作成してきましたが、始めのうちは無自覚に書いていた校歌の歌詞に、ある時期から自覚的にとりくむようになりました……」 谷川さんの校歌は、とてもシンプルな言葉でそれぞれの学校にふさわしいテーマをうたいあげている。リズムもいい。歌にするのだということで作られている。歌の詞だから、定型になっている。そこで、そのリズム、型を踏まえれば、自分たちの校歌を作ることができる。

この本で、一昨年、アニマシオン「校歌を作ろう」を作りました。動機は、6年生への卒業プレゼントのワークショップを頼まれたことでした。「私たちの校歌」を残

そうというわけです。

 私は、保谷市立住吉小学校の校歌をテキストにした(作曲は林光氏)。

 ― わかばけやきのはるのひは

   つちがとってもいいにおい

   みみずもかえるもともだちだ

  (2番を略して3番)

   きんいろけやきのなつのひは

   かぜがとおくへふいてゆく

   みえないあしたがみえてくる ―

 「みえないあしたが みえてくる」なんて、いいですよねえ! 3番は特に透きとおっていて、はればれした、広い世界へ導かれるようです。

 1番と3番を使ったのは、春と夏、秋と冬の組み合わせでは言葉が近くなるからだ。こ

れを音節ごとにカードにしていく(写真)。バラして袋に入れる。チームに一袋ずつ渡して、元に組み立ててもらう。組み立てられたら、声に出して読んで、リズムに乗るように組み替えていく。 そうしたら、校歌の特徴をつかんでいく。

・季節ごとに分かれている。

・同じ組み立てでリズムが生れるようになっている(対比)。

・ラスト(むすび)の行(ことば)が大事。……等々。

 ちなみに、都内のある市小研図書館部でこのワークショップをしたところ、終わってか

ら「実は、私の前任校の校歌なんです」と言われる先生がいて、歌ってくれました。

 最近、この本の中の校歌が、ある国語教科書に詩の鑑賞用に収録されている。そういう

時に、やってみるといい。

 

1 はじまりは 『ふじさんとおひさま』

2024.4.22  岩辺泰吏

 

1 はじめに

身辺整理の必要に迫られるようになりました。一番問題は本です。すでに、足立区からの引っ越しのときに、捨てるものは捨て、売れる本はブックバリューに売り、アニマシオンクラブ事務局メンバー(若手)に引き取ってもらえるものはまとめて渡し、それでも身近に置いてアニマシオンなどに使う本、孫と読む本は残してきた。

しかし、やはり限界は来ていて、あらためて整理していくことにした。まど・みちおさんの関係は昨年『まどさんの詩で時間割』(かもがわ出版)として出したので、これは大丈夫。

 さて、谷川さんの本だけど、詩集、翻訳絵本……等々で山に分けてみた(写真)。ずいぶん、アニマシオンで使わせてもらった。それ以上に、谷川さんの詩が大好き。そのうえ、お住まいも杉並区、さらに私たちはひつじ年(谷川さんが一回り上)。7月27日の日本子どもの本研究会のアニマシオン講座で、「詩と遊ぶ・詩を学ぶ~ぼくらの谷川俊太郎」をやることにしたので、この際、テーマを立てながら何回か書いていこうと思います。これが終わったら、本はアニマシオンクラブ事務局メンバーに引き取ってもらうことにします。

1 スタートの一冊はこれ!

『ふじさんとおひさま』(さの ようこ絵、童話屋1994.1)は、ひらがな4行、2連を基

本として書かれた詩集だ。「毎日こどもしんぶん」に77.7~79.3、連載されたもの。

 まず、「ふじさんと おひさま」から詩の学習をスタートさせた。

「ふじさんは おおきい/おおきいから しずかだ ふじさんを みると/こころも しずかに なる」

 黒板に「ふじさんは」と書く。「それで?」とたずねる。「たかい」「おおきい」と出てくる。

「谷川さんは『おおきい』と言っているんだ」と「おおきい」と書く。「おおきいから」と書いて、また、「それで?」ときく。これは、いろいろ出る。ふんふん……うなずいて、「谷川さんは『しずかだ』と言うんだ」と書く。

「ふじさんを みると」「こころも 」と書く。

 これはむずかしい。そこで、「しずかに なる」と書く。 声に出して読みあう。一文字空きの所のリズムを確認する。

 次に2連に入る。「おひさまは」と書くと、だいたいが「あかるい」となる。「次の行は?」ときくと、「あかるいから 」と出る。 しかし、そのあとに「あたらしい」は出ない。いろいろ出た後に、「谷川さんは『あた

らしい』なんだ」と書くと、「ふーっ」とため息のような声がもれる。「おひさまが のぼると/こころも 」と書くと、「あたらしく なる」と出る。声に出して読みあう。

 2連が並んだところで、「気がついたこと」などを出してもらう。この詩集のでき方がつかめる。

 私は、この詩集を取り上げると決めたら、何度も何度も読む。読みながら、写真のように題名を隠すとか、一部を隠すとか、リズムを取り入れて詩をつくるとか、付箋を貼ってアイデアを書いておく。「あてっこ詩」「まねっこ詩」と名づけてやってきた。それを、『子どもたちに詩をいっぱい』(旬報社1996.6、絶版)としてまとめた。この本と、『だいすき国語』(大月書店・文庫版1988.8)がきっかけとなって、アニマシオンとつながることになった。さらに、この本に手紙を添えて、それをスペイン語にしてモンセラット・サルトさんに届けてくれる人があって、モンセラットさんが来日したときの文部省主催講演会で私の名前を挙げて、「すでに日本でもアニマシオンと同趣旨の取り組みをすすめている人がある」と紹介してくれた。『ふじさんとおひさま』は、アニマシオン第一歩のテキストとなったと言える。